この記事では骨粗鬆症による骨の易損傷性による骨折に対する副甲状腺薬剤(テリパラチド)の効果を、高齢の果樹農家の男性の症例で説明したいと思います。
男性は女性より元々骨が丈夫であるため骨粗鬆症に起因する骨折は多くはありませんが、提示するSさんは71才から82才までの11年間で11か所の骨折を経験されました。遅ればせながら、81才からテリパラチドによる骨粗鬆症の治療を開始してからは、令和8年10月までの4年間で1度も骨折の相談を受けていません。
まずは71才、平成24年2月時の第1腰椎圧迫骨折です。
73才、平成25年11月には右第7~9肋骨骨折で受診されています。
同年12月には第6胸椎圧迫骨折で受診されています。
76才、平成29年1月31日には第9胸椎の骨損傷と右第6肋骨骨折を診断しています。
77才、平成29年11月には第9胸椎と第10胸椎の骨損傷を診断しています。
79才、平成30年2月19日には第4腰椎の骨損傷を診断しています。この時には第2腰椎・第3腰椎もSTIR矢状断で椎体の前方部分に高輝度所見を認め、骨損傷の可能性が疑われました。
81才、令和3年11月には第5腰椎の圧迫骨折を診断しています。
82才、令和4年6月24日には左第11肋骨骨折を診断しました。
Sさんの骨損傷や骨折は脚立から転落したというような大きな事故により発生しているのではなく、ほぼ全て日常的な果樹労働の中で発症しているものです。82才以前にもテリパラチドによる治療を勧めたことはあったと思いますが、患者さんは同意されませんでした。それはテリパラチドの治療は皮下注射の治療となるのですが、当院で採用しているテリパラチドの注射は患者さんが受け入れにくい要素をもっているからです。それは患者さん自身によって毎日腹部などに注射をしてもらうことになるからです。
この注射薬が発売された当初は、週に1回医院で注射の治療を行う薬剤を採用していましたが、様々な副作用が発現し、半分以上の患者さんが治療の中止を希望されました。そして、週1回から毎日の注射に変更すると、注射で注入される薬剤は7分の1の容量となるため、副作用で中止を希望された患者さんはいなくなりました。
しかし、治療を勧め、自己注射であると説明すると治療を躊躇される患者さんはほぼ100%となります。しかし、私は自己注射の実際は、歯磨きをするより簡単ですと説明しています。歯磨きは、コップに水を入れ、歯ブラシを準備し、歯ブラシを水につけ歯磨き粉をブラシ上に乗せ、丁寧に上下の歯を磨き、終わったら口をすすぎ、歯ブラシを洗い、コップと歯ブラシを戻すという手順となりますが、テリパラチドの自己注射はこれほどの手順は必要とされません。冷蔵庫に薬剤を保管し、注射器に針を取り付け、注射器のボタンをカチッと引き、腹部をアルコール綿で消毒し、注射します。絆創膏を貼って、注射器から針を外して、針を保管する缶などに廃棄すれば終了です。認知症傾向があり、1人暮らしの高齢者の方などでは継続ができなかった患者さんもいますが、不安があっても当初の1~2週家族のサポートがあれば、間違いなくご自身1人でも実施可能となります。
Sさんは82才、令和4年6月からテリパラチドの注射の治療を開始し、6年5月まで2年間治療を続けましたが、82才以降4年間骨折の発症はなくなりました。
骨粗鬆症に起因して複数回の骨折を経験した患者さんは、ぜひこのテリパラチドによる治療を検討されることをお勧めします。