年少児の背部痛について、病態を検索すると以外なことが分かる場合があります。それは高齢者にみられる圧迫骨折と同じ、脊椎骨(椎体と呼びます)の骨損傷です。私の印象ではそのような症例は決してまれではありません。年少児であっても医院を受診するような痛みを訴えている場合には時々みられる病態です。
11才小学5年生の女児です。平成27年2月7日に当院を受診しました。1週間前からの背部痛で、縄跳び、走る、遊ぶで痛みがあるということでした。
胸椎部の真ん中ぐらいの高位で棘突起(骨の背側出っ張り部)に圧痛(押してみて痛いかどうかをみる所見です)を認めました。高齢者では棘突起に圧痛を認めれば圧迫骨折を疑います。MRI検査を行ないました。
STIR矢状断(側方からの断面)で第4胸椎の上方半分が高輝度と(白っぽく)なっています。T1の矢状断では第4胸椎の上方部分は低輝度と(黒っぽく)なっています。これはともに同椎体(背骨)が損傷していることを示す所見で、高齢者にみられる圧迫骨折と同じ状態です。T1の冠状断(前方からの断面)でも第4胸椎の上方部分で低輝度となっています。第4胸椎の骨損傷で間違いないと診断されます。
おそらく縄跳びのジャンプが負担となって発症した骨損傷と推察可能です。同様の症例は多数経験しています。
この女児は小学3年生の時も同様の背部痛がありました。
平成24年12月3日のMRI検査のT1矢状断では、第5胸椎上縁が軽度陥凹しており、上縁がわずかに低輝度となっています。第5胸椎の骨損傷の診断でした。
年少児の骨折は治りが早いので、3週間の縄跳びと運動の休止を指示しました。4か月後に再検査をしていますが、第4胸椎の低輝度所見は改善しています。
次は10才小学4年生でサッカーをしている男児です。平成30年8月19日サッカーの試合の接触プレーで右側胸部痛が発症し、その後はサッカーの練習でヘッディングをすると痛みがあるということでの受診でした。肋骨のレントゲン像ですが、赤丸領域です。同部には圧痛は確認されませんでした。
先の女児と同様で胸椎の真ん中ほどの高位の棘突起に圧痛を認めました。圧迫骨折に準じる骨損傷を一応疑います。
胸椎のレントゲン像で異常はありません。骨損傷のチェックのためにMRI検査を行ないました。
MRI検査では第8胸椎の上縁にSTIR矢状断では高輝度、T1矢状断では上縁が不整(軽度陥凹)の所見が確認され、第8胸椎の骨損傷が確認されました。STIR水平断では右第8肋骨の前縁に高輝度所見が確認され、同部の骨損傷もあったのかもしれませんが、診察では圧痛が確認されませんでしたので、メインの病態は第8胸椎の骨損傷で良いと考えます。
2~3週は安静とし、運動全般を禁止し、サッカーは4週からと指示しました。
5.5週後のMR再検査ではT1矢状断で第8胸椎上縁の骨皮質の陥凹が平滑化しており、STIR矢状断の第8胸椎上縁の高輝度所見も改善していることが確認されました。
11才女児も10才男児もレントゲン像の所見だけでは異常なしと診断され、シップ処方などで対応され、医師から大丈夫と診断されたために痛みがあっても縄跳びやサッカーを続け、いつまでも症状の改善につながらないという経過となることも多く経験しています。