重度の左坐骨神経痛が1度は神経根ブロックで軽減したのに、6週間後に再発したら効果を出さなくなった!?

通常、腰痛や坐骨神経痛には神経根ブロックという治療が最も効果を現すと私は思っています。しかし、そうならない患者さんがいます。

部位別の診療例の腰の記事では“坐骨神経痛 MRI所見は軽度・患者さんの訴えは重度 病因高位の決定も困難な症例”で提示した患者さんも治療に困難を感じた症例でした。

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 この記事で提示する患者さんも治療に困難を感じた(本当に症状の軽減がえられるのだろうかと疑問を感じた)症例となります。

52才の事務職のHさんは令和7年11月19日朝起床時より左臀部から左下肢の足関節の背側までの痛み(左坐骨神経痛)が発症し、同日他の整形外科医院を受診し、薬の処方と仙骨部のブロック治療をうけましたが、効果はありませんでした。12月1日老婆のように前かがみの姿勢で歩行しながら当院を受診されました。とても仕事ができるような印象ではありませんでしたが、ご主人の送迎で仕事は続けているとのことでした。

腰椎レントゲン像は軽度の加齢性変化を認めますが、ほぼ正常です。

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右股関節の動きも制限があったため、当院では股関節と腰椎のMRI検査を行いましたが、股関節には異常所見は認めませんでした。

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腰椎MRI検査ではL5-Sの椎間の左側に椎間板ヘルニアを認めましたが、他には異常所見はなく、これが左坐骨神経痛の病因と判断されました。

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そこで同日、L5-S高位で左のS1神経根ブロックを施行し、ノイロトロピンとプレドニゾロン5㎎を朝夕で処方しました。

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4日後の12月6日に再診され、最も痛みの強かった左腓腹部(ふくらはぎのことです)痛はVAS10→3に改善し、左臀部~大腿部痛はVAS6が7~8に増悪しているとのことでした。この評価では良くなったとはしがたいですが、最も痛みの強かった左腓腹部痛はぐっと改善しているのですから、診断自体は間違いないと言えます。同日2度目の左S1神経根ブロックを施行しました。

12月13日の受診ではVAS10→2に改善し、その後4に少し悪化したとのことでしたが、VAS10(最高に痛い)が4(多少痛い)に軽減したのですから、十分な経過と判断します。同日もトアラセットを処方しています。

12月27日の受診ではVAS4が維持されるも、夕方にはVAS6(けっこう痛い)にになるとのことで、3度目の左S1神経根ブロックを施行しました。

そして、1月5日にはVAS2(わずかに痛い)となり、薬剤もメロキシカムいう1日1回の鎮痛剤を10日処方して、服薬も終了として、重度の左坐骨神経痛の治療は一段落したと思いました。

しかし、1か月半経過した2月20日に症状が再発したということで受診されましたが、12月1日の初診時のように老婆のような前屈位での歩行状態でした。12月から1月の治療で症状は軽減したわけですから、同じ治療で症状は改善するはずですので、同日左S1神経根ブロックを施行しましたが、4日後の2月24日に再診され、症状は軽減せず、さらに悪化したという報告を受けました。そこで腰椎MRIの再検査を行いました。

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再検査ではL5-Sの椎間板ヘルニアは軽度増悪していることが把握されました。左S1神経根ブロックでは効果がえられなかったので、当院で重度のヘルニアに実施している、左L5神経根ブロックと左S1神経根ブロックの2椎間ブロックを2月24日に施行しました。

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4日後には2月28日にVAS10→7という報告で、一応効果がみられたと判断し、同日2度目の2椎間神経根ブロックを施行しました。その3日後の3月3日にはVAS10→6の経過で効果ありと判断し、同日3回目の2椎間神経根ブロックを施行しました。処方はトアラセットを1回2錠服用で1日4回服用の処方を行っていました。しかし、3月7日の評価はVAS6→6であり、この段階で私は2椎間神経根ブロックも効果を現していないと判断せざるをえませんでした。

ではどうしたら良いのか?1月中は左S1神経根ブロックで症状の軽減がえられたのに、なぜ効果を出さなくなったのか?私の結論は再発時点の左坐骨神経痛の症状は神経根ブロックが効果をもたらさない慢性痛となってしまったのではないかという見解でした。慢性痛となってしまうと通常の一般的な治療は効果をもたらさなくなります。それしか考えられませんでした。慢性痛については、当ホームページの“資料や動画で学ぶ”での「痛みについて その1:痛みの天秤理論を知り 痛みをコントロールしていく」「痛みについて その2:治療の困難な慢性痛について」を参照してください。

そこで3月7日には慢性痛に効果が期待できるノイロトロピンとアナフラニールを処方しました。すると、3月14日にはVAS6→2に左坐骨神経痛は軽減したのです。以後も同処方を継続することで5月9日時点でもVAS2で症状の軽減は維持されており、患者さんによれば4月28日の東京でのコンサートも問題なかったとのことでした。

6週前に神経根ブロックで症状の軽減がえられた病態が、再発時には神経根ブロックが効果をもたらさない慢性痛となっていた症例の経過でした。