足関節を捻挫して歩行困難 すぐ大事な大会がある!

当院では足関節の捻挫の患者さんに関節内への注射の治療で早期に症状の軽減がえられる治療対応を時々行っています。その治療法について紹介したいと思いますが、このような治療が可能となるのは足関節の記事「足関節捻挫について スノーボードで転倒後に8か月続くスポーツ時の左足関節痛」で紹介している“骨の損傷”を伴っていない場合です。

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足関節捻挫で骨損傷を伴う場合は比較的まれです。まれであっても見逃されると長期痛みが続いたり、数年以上経過して変形性足関節症となり一生痛みが続くようになるリスクとなるので、しっかり診断することは重要です。

足関節捻挫で関節内注入療法が有効であることが、画像で認識できる症例を提示してみます。

その前に足関節の解剖と用語を提示します。足関節の内側の大きな骨は脛骨(けいこつ)、外側の細い骨は腓骨(ひこつ)と呼びます。“くるぶし”と呼ばれる部分は脛骨の内果・腓骨の外果という名称です。

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捻挫の病態は図の前距腓靭帯と踵腓靭帯を損傷していることが大半となります。

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高校2年生のバレーボール部の男子生徒です。平成31年4月29日部活の練習でスパイクを打って、相手の足に着地して左足関節を捻挫し受傷し、4月30日に当院を受診されました。

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受診時両側の足関節レントゲン像ですが、健側の右足関節では足関節の内果・外果部の皮膚は骨の直ぐ上となりますが、患側の左足関節では外果部の皮膚は骨から分厚くなっています(赤矢印)。外傷による腫脹の結果です。外果部と内果部を結ぶ幅は健側では85mmで、患側は97mmで、周囲径としては(円周率をかけた)3.8㎝の差でズボンのサイズとしても4㎝も違うとかなり腫れていることが推察されます。

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視診の印象では象の足のような印象でした。

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上図は中央下部の足関節の側面像(矢状断)の黄色線で足関節を切った水平断のMRI所見では、右足関節で黒い線として確認可能な前距腓靭帯(青矢印)は左足関節では確認できません(赤矢印)。右前距腓靭帯の断裂損傷です。足関節捻挫では最も多くみられる病態です。通常であれば、この患者さんの腫脹の状態ではバレーボールへの復帰は4~6週ぐらいはかかります。ゴールデンウィーク後にはインターハイという重要な大会があるので、患者さんは早期の練習復帰を希望していました。私は最も早く症状の軽減が期待できるのは関節内注入療法であることを説明すると、患者さんは希望されたので同治療を行い、ギプスシーネ固定を行い、投薬も行っています。なお、シーネ固定の写真は私の足です。

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初診の4日後の5月4日にギプスシーネ固定のチェックのために受診してもらうと、患者さんはギプスシーネを外して受診し、「普通に歩けるので練習を始めたい」と言ってきました。

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その時のレントゲン像ですが、97mmあった左足関節幅は88mm(健側との差は3mm)に軽減していました。原則私は患者さんの意向に沿った対応を心がけているので、「じゃ、やってみたら」と答えましたが、練習を開始すれば痛みと腫れが再発して、受診してくることになるだろうと思っていましたが、その患者さんは再診されることはありませんでした。治療した私も驚くほどの治療効果でした。

次は14才中学2年の陸上部のハードルの女子選手です。平成26年9月6日のリレーの練習で右足関節を捻挫し、かろうじて歩行ができる状態で当日受診されました。1週間後の9月13日に新人戦の県北大会があり、ハードルとリレーに出場予定だそうです。

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右足関節の外側は左足関節に比して腫れています。普通なら出場は無理と判断されるでしょう。私はMRI検査を行い、骨に損傷がなければ、左足関節の注射の治療で出場できるかもしれないと説明しました。

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MRI検査(骨が黒く見えるSTIRという条件)では患側の右足関節には骨の損傷はなく、関節部の白さが広がっており(赤矢印)、関節内に出血を認める関節炎の所見です。健側の左足関節の距骨の後ろ側が軽度高輝度を示しており、こちらはケガしていないのですから、元々の運動による痛みを伴っていない疲労骨折の前駆状態と理解されます。このようなことはしばしば見られるものです。

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バレーボールの男子生徒のように足関節を斜めに切るMRI所見(GR条件)では前距腓靭帯が断裂しています(赤矢印)。この状態で全力で走れるようになるには最低で4週間ぐらいはかかるものです。しかし、本人は大会に出たいはずで、私は関節内注入療法をすれば出場できるかもしれないと提案しました。本人も同意して関節内注入を行い、簡易タイプのギプスシーネ固定を行い、投薬は10日分処方し大会終了まで服薬を継続し、3日間固定した後にシーネを外して練習を開始してみる治療方針としました。

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2週間後の9月20日に再診し、ハードルは3位となり県大会に出場できることになったと報告してくれました。関節内注入療法以外にはこのような治療効果は困難であると思います。

さて、最後の症例です。

17才の高校3年のサッカー選手です。平成24年5月11日大会中に右足関節を捻挫し、プレーできなくなり交代し、同日歩行困難で(土曜の午後であったので)当院を受診されました。明日県北大会の準決勝があるけれど、明日か明後日の3位決定戦に勝てば県大会に出場できるということでした。この症例はここで提示した症例3人の中で最も古い時期のものとなりますが、当時からMRI検査で骨損傷がない症例にはスポーツへの早期復帰に向けて関節内注入療法を行っていました。私は明日の大会に出場可能かどうかは分からないけれど、とりあえず検査してみて、関節内注入療法の実施も考慮することを提案しています。

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右足関節は骨損傷はなく、GR矢状断の所見で軽度の関節炎の所見です。

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GR水平断の所見では右足関節は赤矢印の部分で前距腓靭帯が白くなり断裂しています。左足関節では黒く連続性がしっかり確認できます。しかし、GR水平断の別の画像では前距腓靭帯が連続している画像も確認され、骨の損傷は確認されず前距腓靭帯の部分断裂と診断されました。関節内注入を行い、安静保持のために中学の女子選手と同じ簡易シーネを1~2日装着することを勧めました。投薬は大会期間中の4日分行っています。シーネを外して膝の屈伸が可能となればプレーしても良いのではと説明しています。この患者さんは1日のみの受診でしたが、12日後の5月23日に電話で経過を聞きました。翌日の準決勝は欠場したけれど、3位決定戦にはフル出場して2ゴール決め県大会に出場できることになったと、うれしそうに報告してくれました。

捻挫を受傷して歩行困難であっても、大事な大会が間近に控えている場合には当院で相談してもらえれば、出場できる可能性も見い出せるかもしれません。