院長は骨折を診断した場合、原則として骨折は1か月ぐらいで肉として固まり、 骨として治るには2~3か月かかりますと説明しています。
少し専門的な説明をします。“肉として固まる”というのは骨折部には出血が起こるわけですが、出血は血のりとなって固まります。医学的には瘢痕(はんこん)と呼ばれます。皮膚表面のかすり傷の出血はかさぶたとなりますが、かさぶたは血液の液性成分が蒸発してかちかちの塊となります。体内の出血の液性成分は蒸発することはないので、固い硬質ゴムのようになります。接着剤のボンドが固まったような状態です。骨折部は4週間ぐらいでこのような瘢痕が形成されて、ぐらぐらした骨折部はしっかり固着して痛みが軽減するのです。そこに骨の細胞が生成する骨の成分(石灰化成分)が沈着して骨折が治癒していくことになります。
これらの経過を肩の鎖骨の軽度の骨折で説明していきます。かなり以前の症例のため性別・年齢は不明です。
右鎖骨の外側端(医学的には遠位端と表現します)の軽度の骨折の初診時のレントゲン像です。
4週後のレントゲン像となりますが、骨折部領域は広がっています。この時点で骨折部には固い瘢痕が形成されて、骨折部は瘢痕により固い肉の強度でつながり、痛みはほとんどなくなってきます。痛みが軽減するため、この時点で受診しなくなる患者さんもいます。
図はコンクリートの破断の写真ですが、破断した箇所は断裂した部だけではなく、周囲に亀裂が広がっています。亀裂部もコンクリートは損傷しています。骨折もこれと同じです。骨折という破断が起きても、レントゲンで断裂が確認できる部位だけが損傷しているわけではなく、周囲の骨も損傷しているのです。生き物である骨は損傷が及んでいる部位の壊れは時間の経過とともに明瞭となっていき、レントゲンでは骨損傷部位が広がったようになるのです。
7週後のレントゲン像では骨折の断端が白くなっています。損傷していない骨の断端に新たな骨形成の所見が現れたことを示しています。
14週では骨折の骨欠損部(瘢痕で埋まっています)に新しい骨が形成され、埋まってきています。瘢痕に骨成分が沈着してきた所見となります。医師はこの辺の時点で「骨折はもう大丈夫です。」と患者さんに治癒していることを告げます。
日常生活での痛みは4~8週の間にほとんど消失するので、この段階まで通院してくる患者さんはまれな方かもしれません。患者さんが感じとる骨折治癒の感覚と医師がレントゲン像で確認する骨折治癒所見にはギャップがあるのです。