頚部痛も腰痛も慢性痛であった症例

事務職の50才の女性です。令和7年11月28日に当院を受診されました。3か月前から右頚部痛があり、うがいや目薬の点眼で痛みが出るそうです。2週間前から腰痛も発症し、歩行開始時、車の乗降でVAS8の痛みがあるということでした。

頚椎のレントゲン像では軽度の頚椎症(首の加齢性変化です)を認めます。

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腰椎のレントゲン像ではほとんど異常を認めません。

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私は頚部痛に対しては鎮痛剤とプレドニゾロンの処方を行っています。12月8日(初診8日後)に、より症状が強いと判断した腰椎のMRI検査を行いました。

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しかし、VAS8の痛みの原因となりそうな所見は確認されず、L45とL5Sに軽微な椎間板ヘルニアを認める程度の所見です。服薬でVAS8→1~2に軽減したそうですが、腹部と両下肢に浮腫を生じたため5日で服薬を中止したそうです。服薬を中止すると腰痛はVAS4~5に戻ったそうです。この経過で頚部痛はVAS7のままであったとのことでした。

この段階で頚部痛が軽減しなかったことから、頚部痛は通常の鎮痛治療では改善しない慢性痛の可能性を考慮し、患者さんには慢性痛の理解のためのパンフレットを渡しています。

浮腫が軽減した12月20日からノイロトロピンという通常の鎮痛薬とは異なる疼痛軽減薬とプレドニンを処方していますが、この服用でも頚部痛の軽減はえられなかったため、12月27日に頚椎MRI検査を行っています。

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C34に軽度の、C45に軽度~中等度の、C56に中等度の椎間板ヘルニアを確認しました。1週間の服薬でも頚部痛はVAS7~8のままであるとのことでした。通常はこの頚椎のMRI所見であればノイロトロピンとプレドニンの服薬である程度は症状の軽減はえられるはずと考えます。そのため同処方を3週継続しました。

お正月をはさみ、3週服薬経過した1月17日の時点でも頚部痛は不変でVAS6~8とのことで、目の奥や耳の奥に痛みを感じるとのことでした。この時点でこの患者さんの頚部痛は通常の痛みではなく、慢性痛であると判断し、ノイロトロピンとアナフラニールという慢性痛に効果が期待できる抗うつ薬を処方しました。(当院ホームページの資料や動画で学ぶの“痛みについて その2 治療の困難な慢性痛について”を参照してください。)

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同処方を服薬して1週後の1月24日には腰痛は気にならなくなり、頚部痛もVAS4~5に軽減し、うがい、目薬の点眼も可能となったとのことでした。私は治療の目標は症状がVAS2~3なので、しばらく服薬を続けて経過をみましょうと説明したのですが、患者さんは「まだ服薬を続けるんですか。もう飲みたくない。」というので驚きました。一応、ノイロトロピンとアナフラニールを2週間処方しましたが、その後患者さんは受診していません。