圧迫骨折と骨粗鬆症について その1 で骨粗鬆症に起因する圧迫骨折の症例を提示し、また骨粗鬆症について解説しました。ここでは当院での骨量評価を行いながら治療した症例の経過を提示して、骨粗鬆症治療の実例を知ってもらいたいと思います。この文書で提示している骨量の%はYAMという指標で、30代の女性の腰椎(腰骨)の平均的骨量を100%とした数値となります。
上図は当院で20年以上骨粗鬆症の治療を続けた果樹農家の女性Tさんの治療経過の患者さんの骨粗鬆症治療メモとなります。
当院が開業した1996年(平成8年)10月の61才時から骨粗鬆症の治療を開始しています。当院の骨粗鬆症治療への治療ではリセドロン酸Na錠というビフォスフォネート製剤(血中のカルシウムを骨に沈着させる効果のある薬剤です)を基本治療薬として適応しています。Tさんは2001年11月66才時に2m70㎝の脚立から落下して第10胸椎と第12胸椎の圧迫骨折を受傷されています。骨治療治療を継続して2009年(治療開始後13年)まで(左側のメモのデータ)骨量は初期値66%から83%に17%増加しています。(右側のデータで)2011年から骨量は減少傾向となっていますが、最終検査となった85才時点でも70%以上骨量を維持していました。骨粗鬆症の治療の目標はYAM値を70%以上とするということなので、Tさんは治療目標をクリアできていたと理解します。その後、2022年87才までTさんには通院していただきましたが、認知症が進み施設に入所したため受診がなくなりました。
上図メモのSさんは平成11年64才時より骨粗鬆症治療を開始した女性ですが、当院で骨粗鬆症検査を行った方で最も骨量の少なかった方です。初期YAM値は35%という低値でした。リセドロン酸Na錠による治療を継続しましたが、3年後には51%に増加しています。しかし、個人の身体的個性というものがあって、いくらでも骨量は増加するとそうではなく、以後は50%超で安定して推移していました。2015年(平成27年)以後は高齢と呼吸器障害のためにデキサ検査の実施ができなくなりましたが、2024年89才まで圧迫骨折を経験することなく、天寿を全うされました。
次の症例Rさんは医大で肝疾患の難病を治療されていた方です。難病治療のためのステロイド剤で骨粗鬆症を起こしやすくなっていた方です。平成25年9月の初回骨量検査時は腰骨L2~3は57%、大腿骨54%でかなり低値でした。そのためリセドロン酸Na錠・エビスタ(ラロキシフェン塩酸塩:女性ホルモン系統の治療薬です)・エディロール(ビタミンD3製剤)の3種類でしっかり治療を継続していたのですが、平成28年の骨量検査でもYAM値は、大腿骨は55%と軽微増加しましたが、L2~3は51%と明らかな低下を示したため、プラリアという半年に1回の皮下注製剤での治療も追加することにしました。すると大腿骨は1年4か月後には4%、2年7か月後には11%の骨量増加を認め、L2~3の腰骨では1年3か月では51%で変化なしでしたが、2年7か月では12%の骨量増加を認めました。当院では経口の骨粗鬆症治療薬で骨量の増加を認められない場合には、この半年に1回の注射の治療薬プラリアを適応しています。
このような治療を継続しても圧迫骨折を発症する場合には、テリパラチドという注射製剤の適応を勧めていますが、この治療については別記事で説明したいと思います。