患者さんは25才の総合病院に勤務する男性看護師さんです。
初回受診は24才時でX年9月15日、月2回行っているソフトボールの大会があり、その後に腰痛が発症したそうです。3日後の18日に腰痛が悪化し立ち上がりが困難となり、9月21日に受診されました。
腰痛に対する治療は一般的なレントゲン撮影後に鎮痛剤とシップで様子をみる治療と、MRI検査を行い、検査結果によっては積極的に神経根ブロックを行うという2つの治療方針を提示していますが、患者さんは後者の方針を希望されました。
MRI検査の横からみた画像(矢状断)ではL5Sの椎間板ヘルニア(オレンジ矢印)が目立ちますが、右側の水平断(横断面)ではL5Sは丸い横断面の脊髄と椎間板ヘルニアの境界は離れています。しかし、L45では脊髄の前方(画像では上方)は軽度凹む状態となっており、左側よりでヘルニアと脊髄は密着しています(赤矢印)。また、T1矢状断(上欄中央画像)ではL5Sのヘルニアと後方の脊髄の境界は黒い線が確認されますが、L45ではわずかに椎間板が(L34に比較して)グレーに後方に出ており黒い脊髄との境界は不鮮明です。境界が黒く鮮明なのは古いヘルニアを示し、境界が不鮮明な椎間板は最近発生したヘルニアと私は判断しています。
そこで患者さんの希望も確認して、L45高位で左側の神経根ブロックを行いました。薬も10日分処方しています。
16日後の10月7日に患者さんは再診され、VAS6(けっこう痛い)が1(0痛みなし/2わずかに痛い)となり、その後VAS6に戻ってしまったが、左側は痛くなくなり右側のお尻が痛むということで、L45高位で右側の神経根ブロックを行いました。上図右側の画像です。
その後、この患者さんの受診はなくなりました。1年3か月後の25才時のX+2年1月の24日と25日にスノーボードを2日続けてした後の夜勤で、仮眠後の起床で腰痛が再発したということで、1月29日に受診されました。それまでの期間は週1回のソフトボールも、週2回のジムでの筋トレも問題なかったとのことでした。痛みの程度はVAS8(とても痛い)でした。腰痛の部位は1年3か月前とほぼ同じで、患者さんはこの時も神経根ブロックでの治療を希望されました。検査を行わずに前回と同じ高位でブロックを行う場合もありますが、1年3か月ソフトボールもスノーボードも支障なく行えていたわけで前回のヘルニアは良くなっていて、違う高位の椎間板が病因となっている可能性もあると私は考えました。そこで、ブロックを希望するのであれば今回もMRI検査を行って痛みの原因を明確にした方が間違いがありませんと説明したところ、MRIの再検査を希望されました。
同日のMRI検査では、前回の責任高位であったL45(赤矢印)とは異なるL5Sの椎間板ヘルニア(オレンジ矢印)が悪化していることが確認されました。
そこで、L5S高位での両側の神経根ブロックを施行しています。
10日後の2月9日に受診され、痛みはVAS8→0~1に軽減したという報告を受けました。MRI検査を行わず、1年3か月前のL45高位でブロックを行っていたら、このような症状軽減はえられなかったはずです。
部位別の診療例の提示の“腰”の項目では、「東京の日帰り往復と30分の畑仕事で腰痛が生じブロック希望で受診されたが、以前ブロックで治った腰痛とは全く原因が違っていた症例」という記事があり、患者さんが以前と同じ腰痛と考えた原因が全く違っていた症例が提示されています。
その逆で「同じ腰の椎間板に起因する痛みなのに、痛む部位が全く違うという現象」という記事もあります。
ご確認いただければ幸いです。