ながさわ整形外科 医療法人ピーチパイ

スポーツ愛好者の足部痛 中足骨の疲労骨折について

スポーツ愛好者の足部痛で最も多いのは中足骨の疲労骨折で、まれなものではありません。

疲労骨折はレントゲン撮影では診断できません。よほど悪化してほとんど歩行困難というような状態となれば、レントゲン像でも診断可能となるかもしれませんが、通常患者さんの訴えは運動時の足部の痛みであったり、運動はできるけれど運動後に歩行痛が出るというような状況で受診されます。このような状態ではまずレントゲンでは診断は不可能です。MRI検査が不可欠です。

疲労骨折については、部位別の診療例の提示で“骨について”でも説明していますので、参照いただければ幸いです。まず、足部の骨の構造を提示しておきますが、中足骨という骨の列(親指から第1中足骨とし、第5中足骨まであります)の名称だけ覚えてください。

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症例を提示してみます。18才女性、高校3年のソフトボール部の選手です。平成25年5月13日大会でヘッドスライディングして首の痛みが発症し受診されました。いっしょに1週間前からの左足部痛についても相談を受けました。歩行痛はあるけれど、プレーしていての痛みはない?ということでした。左足部の赤丸領域の痛みでした。頚部痛に対して1週間の処方を行い、経過観察としました。頚部痛に対する服薬で足部痛も一定軽減する可能性があると説明しています。左足のレントゲンでは異常所見を認めません。

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5月24日(11日後)に再診し、練習は止めていたとのことで、頚部痛は軽減消失していましたが、左足部痛は不変でびっこでの歩行でした。6月1日に県大会があるということで、この時点でMRI検査を行っています。

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STIRという条件の矢状断(足を縦に切った画像)です。本来正常の骨は黒く描出されますが、左の第3中足骨は骨内も骨の周囲も白くなっており、これは骨が傷ついて骨の内外に出血しているイメージとなります。

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T1という条件の水平断(足を横断するように切った画像)です。この条件では損傷した骨は黒くなりますが、左第3中足骨のみが骨内が黒っぽくなっています。※STIRの水平断であれば本来黒い骨は、この状態では骨内は白くなります。

通常、中足骨の疲労骨折では4週間ぐらいは運動禁止が治療の原則ですが、それをこの患者さんに強制したら、1週間後の3年生最後の県大会に出場できなくなります。私は処方とともに、当院独自の中敷き治療であるインソールEという中敷きを作成し、可能であれば練習して大会にも出場してみればとアドバイスをしました。

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大会後の6月4日に再診した時のレントゲン像となりますが、患者さんは大会に出場し、インソール装着前の痛みを10とすると4程度に軽減し、70%gくらいのプレーが可能だったと述べていました。第3中足骨の赤矢印に治癒のための新しい骨(仮骨といいます)の形成が確認できます。

もう1例提示してみます。29才の男性自衛官ですが、ランニングで発症した左足部痛で、他の整形外科で診療を受けたのですが、1か月以上軽減しない状況で当院を受診されました。問診からは中足骨の疲労骨折が最も疑われると感じましたが、MRI検査では疲労骨折の所見は確認されず、左足の局所注射で症状は劇的に消失しています。

平成25年12月14日自身1人で福島荒井の駐屯地から宮城県七ヶ浜まで18時間をかけて100㎞マラソンを走ったそうです。その後、左足背部痛を発症し、12月16日に他整形外科を受診し、「炎症だ」と言われ、薬の処方を受けたが良くならず、1か月以上経過した1月18日に当院を受診されました。赤丸領域に痛みを訴えていました。1時間程度のランニングは可能とのことでした。私は発症の状況と経過から中足骨の疲労骨折であろうと推察しました。ただ、第1中足骨の疲労骨折は極めてまれなので、第2中足骨の疲労骨折であろうと推察しました。

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しかし、MRI検査STIR条件では中足骨に疲労骨折の骨内や骨周囲の高輝度所見(白く描出される状態です)は確認されず、第2中足骨の足背皮下に軽度の高輝度所見が確認されるのみでした。

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疲労骨折でなければ、長期運動・トレーニングを休む必要はありません。この皮下の炎症に最も効果があるのは局所へのステロイドの注射であり、その説明をすると患者さんは注射を希望され施行しています

患者さんの受診は1度のみで、半年後に電話で経過を聞くと、注射後2~3日で痛みはなくなったとのことで、その後ランニングに問題はないと教えてくれました。

疲労骨折を強く疑った症例ですが、MRI検査で疲労骨折は否定され、ごく早期に症状の治癒をえることができました。

足部痛について、スポーツ愛好者でなくても疲労骨折をきたすことについて、中高年の中足骨の疲労骨折という記事で説明しています。