ながさわ整形外科 医療法人ピーチパイ

足首の返りが悪く歩きにくい 歩けないわけじゃないからと放置すると一生そのままとなります

足の返りが悪い状態を医師は“下垂足”と呼びます。

典型的な下垂足は脳卒中による片麻痺で生じ、その程度は重度であることも多くあります。

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足首を返す動作を背屈といいますが、背屈を行う下腿の前脛骨筋(ぜんけいこつきん)の神経は腰から出ているのですが、腰の加齢性の病態である脊柱管狭窄により神経が働かなくなり、下垂足を発症することになります。

前脛骨筋.jpg

私が研修医であった35年前は腰に起因する下垂足は手術適応とされていました。しかし、この35年の間に高齢化社会となり、腰椎の加齢現象による下垂足は日常診療でしばしばみかける症状となりました。下垂足となると歩行で地面や敷居などで足が引っ掛かりやすく転倒のリスクにより高齢者の大けがにもつながりますし、それ以前に歩きにくくなります。

当院では腰椎に起因する下垂足に対して神経根ブロックを適応して良好な治療成績をえており、この治療法については整形外科雑誌にも掲載されました。全国版の特集号の雑誌に掲載されるということは、この病態に対して多くの整形外科医が困っているからでもあります。

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症例を提示します。71才の男性です。令和2年9月より左脚に違和感を生じ、12月には左足に力が入らなくなり、スリッパが脱げてしまうようになったそうです。3月に他整形外科で腰椎に異常はないという診断でサポーターを作製しましたが効果はなく、6月14日に当院を受診されました。

熊耳・初診時.jpg

両足の背屈の状態は上図のようでした。

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腰椎MRI検査ではL34とL45に軽度~中等度の脊柱管狭窄の所見が確認され(赤矢印)、通常ではこの程度の脊髄の圧迫では下垂足を呈することはまれですが、問診・診察からはそれ以外の可能性はないと判断しました。当院では下垂足の患者さんを腰椎のブロック注射により症状の改善がえられた患者さんが何名もいますが、前脛骨筋の神経はL34とL45から出てくる神経で、その2つの神経に1週ごとに3回ブロックを行うことを勧め、施行しています。

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そのブロックを3回行って右足関節の背屈は改善がえられましたが、足は内側向きとなっているため(足部の内反)、L5Sの神経にも3回ブロックを行い、下垂足と足の内反はかなりの改善がえられました。

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写真での改善はさほど顕著なものではないと思われるかもしれませんが、当院受診前の6か月は何らの改善がえられなかったわけですが、当院の治療により歩きやすくなった、スリッパが脱げることはなくなった等で患者さんには十分満足していただけました。

もう1例提示します。52才の男性で公務員の方ですが、ソフトボールを高いレベルで行っている方です。令和6年11月2日に受診されました。半年前から腰痛があり、9月末に左足関節の背屈障害に気づいたそうです。

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この方の場合、71才の男性よりも腰椎での脊柱管狭窄の所見はL34・L45で重度であり、下垂足を発症しても仕方ないかなという状態です。

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私の治療方針に沿って週1回、連続3回の2つのレベルでの神経根ブロックを施行しました。しかし、ブロックを3回行った時点で背屈の筋力は幾分改善しましたが、視診での背屈の改善は明らかという印象にはなりませんでした。この方はその後ソフトボールの社会人全国大会に出場されています。7か月後に腰痛で受診されたときには、左足関節の背屈障害は改善しており、本人は背屈障害があったのは右であったのか、左であったのかも忘れてしまっていました。

平野・下垂足.jpg足首の返りが悪く歩きにくい、スリッパが脱げやすいというような症状の方はご相談いただければと思います。