70才の女性ですが、40年前からの腰痛、10年以上前から腰痛のため背臥位で眠れず、左側臥位で寝ているという患者さんです。
タイトルに記載したような治療結果を私が目指したわけではなく、私が日々行っている腰痛治療に沿って治療していった結果、患者さんは背臥位で普通に眠れるようになったと教えてくれて、驚くことになりました。
令和7年3月1日に腰痛と右臀部痛で受診されました。10年以上前から背臥位でVAS4~5の腰痛があり、30分以上は寝ることができないとのことでした。また、10年以上前からテレビ体操を1日3回行っているということでした。3か月前から右臀部痛も発症して、当院を知人の情報で当院を受診されることになりました。
右臀部痛ですが、腰椎のレントゲン像で確認できる限り右股関節には異常を認めません。年相応の老化現象の所見が見られる腰椎レントゲン像です。
MRI検査では全体としては軽度の腰部脊柱管狭窄症の所見ですが、私の経験的判断ではL45高位は中等度の脊柱管狭窄の所見と評価されて、これに起因する腰痛・右臀部痛と診断し、右L5神経根ブロックを施行しました。
1週間後の3月8日痛みはVAS6→0に軽減しました。
8月4日、9月30日にも同様症状で受診され、同ブロックを希望され施行しています。
9月30日の受診時に、3月1日のブロックで背臥位での睡眠は30分が限界だったが、3月中は4時間背臥位で眠ることができたそうでした。左側臥位でしか眠ることができないと教えてくれました。10年以上も続く症状(腰痛)ですから、慢性痛の状態であると認識し、ブロックだけでなく慢性痛としての治療も開始することにしました。当院で夜間の痛みに対して処方しているランドセンという薬剤(痛みを軽減し、ぐっすり眠れるという効果が期待できます)と慢性痛に対する薬剤(デュロキセチン)を処方しました。デュロキセチンは1日1錠から始めて、1週ごとに1日2錠、3錠と増やしていくことで効果がはっきりしてくるという少し変わった薬剤です。2週分処方して経過をみることにしました。
10月10日の再診時にはVAS4~6→0となり、背臥位でも6~7時間眠れるようになったとのことでした。しかし、1日中眠気の副作用が出たため、デュロキセチンは1日1回の服用で対応しているということでした。右側臥位でも眠れるようになったとのことでした。
患者さんに背臥位でも眠れることを期待して治療していきましょうというような説明は一切していなかったのですが、通常当院で行っている腰痛の治療で対応していったところ、とても改善が不可能と思えるような10年以上も続いてきた背臥位での就眠不能が克服できる経過となりました。