整形外科を手関節痛で受診される方は時々いますが、その原因の大半は手関節に存在している三角線維軟骨という軟骨の損傷です。ケガで損傷が起こることもありますし、日常の作業負担で損傷が発生する場合もあります。
24才の女性で、当院の看護師です。令和4年1月3日スノーボードに出かけ、特に転倒で痛めたということもなかったようなのですが、以後左手関節痛が発症し、1月24日に症状が続くということで相談を受けました。
ドアノブを回す、立ち上がりに左手をつくと痛いということでした。左手関節部では赤矢印の三角線維軟骨部に圧痛(押すと痛むという所見)を認めました。レントゲン像は異常がありません。
MRI検査では、三角線維軟骨は本来尺骨に密着していますが(右手関節・青矢印)、左の三角線維軟骨は尺骨から剥離し、同部位が白くなっています(赤矢印)。鎮痛剤とプレドニゾロンを1日2回の服用で1週間処方し、それで症状は軽減しました。
次は服薬で症状の軽減がえられなかった症例です。
15才の高校1年、ハンドボール部の男子生徒です。令和4年8月27日当院を受診されました。
1か月目に練習で転倒して右手をついて受傷しました。以後、練習で右手関節痛がありましたが、日常生活では痛みはなかったようです。8月20日に接触プレーで痛みが増悪し、日常生活でも痛みが出るようになりました。
レントゲン像では異常を認めません。右手関節の橈骨(親指側の骨)と尺骨(小指側の骨)の間の遠位橈尺関節部と三角線維軟骨に圧痛を認めました。24才女性看護師に処方した薬と同じ薬を1週間処方し、多分それで良くなるでしょうと説明しました。
9月6日に再診し、右手関節痛は軽減しないということでした。そこで9月9日にMRI検査を施行しました。
左手関節の三角線維軟骨は正常で黒く描出されていますが(青矢印)、右手関節の三角線維軟骨は一部が白くなっており(赤矢印)、炎症所見を示します。炎症とは小さく傷ついた状態と理解して良いと思います。
服薬で軽減しなかったので、より効果が期待できる手関節内注射の治療を施行しました。この際に特に処方はしていません。
9月24日受診して、ハンドボールの練習を開始しているということでしたが、以前はVAS6(けっこう痛い)という痛みでしたが、練習開始時にVAS4(多少痛い)の痛みを感じるが、直ぐ気にならなくなるということでした。その痛みに対して、2度目の注射で対応するか、服薬してみるかと提案すると、服薬を希望されたので、最初の処方(1日2回服用)を1週間、2週目は1日1回の服用で1週間処方していますが、以後の受診はありませんでした。
より早期に症状の軽減を期待する患者さんには初診時より関節内注射の治療を勧めています。