ながさわ整形外科 医療法人ピーチパイ

手のしびれと痛み 手根管症候群に対して3年間手術を拒否し 91才で手術を受けた症例

平成29年12月11日87才時、両上肢痛と右手のしびれで夜間覚醒するということで、当院を受診されました。肩 前挙:右145度 左123度 側挙:右140度 左134度 で

肩に起因する夜間痛ではないと判断し、

頚椎MRI検査施行。

HWMR.jpg

C2-3中等度~重度の C3-4・C4-5・C5-6・C6-7は中等度の脊柱管狭窄の所見を確認しています。

頚椎に起因する上肢痛・右手のしびれと判断し、当院の頚椎疾患に対する処方を1週行いました。

12月18日症状は軽減したとのことでした。この時点では手根管症候群は疑っていませんでした。

手根管症候群とは手首の手のひら側に手根管というトンネルがあり、9本の腱(指を屈曲させる腱)と正中神経が通っているトンネルですが、腱鞘炎を発症して腱が腫れるために相対的に正中神経が圧迫されることになり、そのために手にしびれや痛みを生じる加齢性の疾患です。

平成30年10月1日88才時、右のしびれで夜中2~3回覚醒するということで受診されました。

この時は手根管症候群を疑って、チネル兆候という手関節部での神経の刺激症状と、ファレンtestという手関節の肢位でしびれが悪化する所見をチェックしています。チネル兆候は陽性でしたが、ファレンtestは陰性で、必ずしも手根管症候群と診断できない理学所見でした。

平成29年と同様の処方で症状は軽減しています。

しかし、12月10日から症状は再発し、21日には夜間痛で眠れないということで、同日手根管に注射の治療を行い、症状の軽減をえています。これにより患者さんの右手のしびれと夜間痛は手根管症候群によるものであることが確定できました。

しかし、4月23日にも症状は再発して手根管注射を施行しています。

それから2か月後の令和1年6月10日に右手のしびれで物を触っている感覚がないということで受診されています。この時はチネル兆候もファレンtestも陽性で、手根管症候群の手術も視野に入れて両手関節のMRI検査を行っています。

手根管MR1.jpg

手根管MR2.jpg

手関節を水平に切った画像です。中央部のスイカの種のような部分が手指の屈筋腱ですが、ピンクで囲った領域が正中神経の位置するところとなります。2つの断面とも右手関節で正中神経は重度に圧迫されていることが分かります。

この時も手根管注射をしたのですが、全く効果がなかったということで症状の改善には手術しか有効な治療法はなくなりました。当然、手術を勧めたのですが、患者さんは不自由じゃないから大丈夫という見解となりました。

再診されたのは3年後で、患者さんは91才となっていました。

令和4年3月3日右手のしびれでずっと眠れていない、何もできないということでした。私は手術を勧め、手術を受ければ今日からぐっすり眠れますよと説明しました。すると患者さんは手術を受けると言いました。私は患者さんの気持ちが変わらないように、「今日やりましょう。」と言って、その日手術を行いました。

3月4日に術後の消毒で来院された患者さんは、「昨日はぐっすり眠れた。」と言っていました。抜糸して1週間後に経過観察した後は、患者さんは受診されていません。