ながさわ整形外科 医療法人ピーチパイ

リウマチ指導医・県立医大臨床教授なのにVAS10の痛みに無関心?

通常慢性関節リウマチ(医師はRAと略します)は、いろいろ関節に痛みが出る疾患で、普通は手関節や手指から発症することが普通です。朝の手指のこわばり感も症状の特徴の1つです。

患者さんは66才の女性でホームセンターに勤務している方です。

X年11月にいろいろな部位の関節痛で総合病院を受診し、慢性関節リウマチ(RA)と診断されて、加療を受けていました。

X+2年3月10日で右足背部痛が発症し、同病院の主治医に相談したそうですが、医師は「う~ん」というだけで何の対応もなかったそうです。

4月8日に当院を受診されました。右足背部痛の他にも、左足背部痛と第1趾MP関節(指のつけ根の関節)痛も訴えられました。

当院を受診された時は診断されて加療した経過の中であり、手指の関節痛や手関節痛の訴えはなく、両側足部痛の訴えであり、比較的まれなリウマチの状態でした。

初診時Xp2.jpg

右足背部の痛みの程度を確認すると、VAS10!(=最高に痛い)とのことでした。初診日の血液検査でリウマチ因子は157(正常は15以下)、抗CCP抗体という近年RAに特徴的な血液検査は497.7(正常は4.5以下)で、リウマチで間違いない結果です。

総合病院でのリウマチの治療状況を確認すると、主体となるメトトレキサートという薬は1週で1錠(2㎎)しか処方されていませんでした。私の経験ではメトトレキサートは1週に3錠(6㎎)以上服用しなければ、しっかり効果は出しません。メトトレキサートが1錠であっても、関節痛がVAS2(わずかに痛い)ほどにコントロールされていれば、それはそれで良しとされるかと思いますが、VAS10の痛みを訴えているのに「う~ん」で何も対応がないというのは、医師の基本姿勢がどこかに行ってしまっているとしか私には思われません。

同病院のホームページを確認すると同医師はリウマチ指導医・県立医大臨床教授とありました。肩書を持っているだけで患者さんは良くなりません。

初診の10日後に両足部のMRI検査を実施しました。

初診時MR2.jpg

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右足は第2中足骨(細長い骨・赤矢印)と第2楔状骨(四角形の形の骨・黄色矢印)が白くなっています。左足は左踵骨(かかとの骨)の前方部が白くなっています(青矢印)。」これらは骨の炎症を意味します。左足底部の筋と皮下組織も炎症所見を呈しています。炎症とは“傷ついている状態”です。本来関節の炎症であるリウマチの炎症が骨や筋にも及んでいる状態と推察します。

左足は外反母趾の所見もあり、第1趾MP関節痛も訴えていたので、同関節に関節内注射の治療を行うとともに、鎮痛剤とステロイドを処方するとともに、メトトレキサートを2錠に増量する治療、当院独自のインソール治療を開始しました。

5月6日にはVAS10→6(けっこう痛い)に軽減し、メトトレキサートを3錠に増量しました。

5月20日にはVAS1(VAS0は痛みなし、2はわずかに痛い)となり、6月4日にはメトトレキサートを4錠とし、ステロイドの減量を開始しました。

X+2年9月にはステロイドはオフとしていますが、痛みはVAS1~2に維持されています。

いくら肩書が立派でもしっかりと患者さんに向き合う姿勢がなければ、どんな不具合も起こりえます。