68才の女性で、週3回スィミングを行っている方です。
X年12月17日県北地区では最も大きい病院で甲状腺の手術を受けられましたが、翌日に手術前までは不自由のなかった左肩の自動運動ができない状態となったそうです。
担当医は、これまでの手術でそんなふうになった人はいないから、手術には関係ないことだと断定したそうです。
患者さんはその病院でのリハビリを求めたそうですが、担当医からはそのようなリハビリはないと拒否されてしまいました。
県内では最も医療技術は高いと評価される病院ですが、技術も疑問であれば、医師の人間性は最低レベルではないかと感じます。
患者さんは仕方なく自分でリハビリをしようと手術後2か月でスィミングを再開したそうです。半年で背泳ぎが可能となり、クロールは2年かけて可能となったそうです。
当院を受診されたのはX年+5年6月20日(麻痺発症後4年6か月の時点)で、バタフライが泳げないので泳げるようになりたいという希望での受診でした。
初診時の左肩の状態ですが、十分な挙上とはなっていません。
初診時の両側のレントゲン像ですが、肩甲骨は白線で囲っています。左肩甲骨は頭部側に偏位していて、縦の長さも短縮しています。
これは脳神経の副神経を損傷したことによって発生した左僧帽筋麻痺の状態で、甲状腺の手術ミスとしては有名なもので、医師であれば知らない人はいないはずです。
僧帽筋とは背骨から起きて肩甲骨に付着する大きな筋肉で肩甲骨を動かしていますが、僧帽筋が麻痺して肩甲骨を下に引っ張る力が大きく減弱し、左肩甲骨は頭部側に偏位してしまったのです。
MRI検査では白線は肩甲骨棘上筋という筋で、黄色線が僧帽筋となりますが、左僧帽筋は右に比して薄くなって麻痺によって萎縮してしまったことが分かります。
当院で僧帽筋麻痺のリハビリに取り組むことは初めてのことでしたが、それまでの肩のリハビリを応用して取り組むことにしました。患者さんには「バタフライが可能となることをお約束はできませんが、やれることをやってみます。」と説明しました。
しかし、2.5週後の7月7日には左肩は大きく挙上が可能となっています。
10月2日にはクロールは100%可能となったとのことで、その時点でバタフライは3ストローク可能となったと述べられています。
X+2年3月28日(初診から1年9か月後)バタフライで50m泳げるようになったということで、運動器リハビリテーションは終了となりました。