下腿の創傷は一般的に治りにくいと理解して良いと思います。
少し醜悪な写真となりますが、下の写真は日曜当番医で処置を受けた下腿創傷の7週間後の状態です。
60才の女性で階段で転倒し、階段に右下腿を打撲して受傷した創傷でした。
日曜当番医で処置を受け、2日後に当院を受診した時の写真撮影はしていませんが、下図のようなイメージの直線状の創傷でした。
処置した当番医は「2週間で治る」と言っていたそうです。しかし、初診時にこの創を見た時に、私は「ちょっとまずいな」と思いましたが、他医師の処置に積極的にケチをつけることは患者さんにも、その医師にも悪いことのように思って、経過をみることにしました。
何がまずいかというと、ざっくりと傷を強く縫い合わせているため、皮膚の緊張がとても強かったのです。皮膚に強い緊張の張力が働くと、皮膚の血液循環が悪くなり、皮膚が壊死となる場合が出てくるのです。
初診時にそのようなことが予想される皮膚の緊張状態を示していたので、私は「まずいな」と感じたのです。
他医師に気兼ねをしたばかりに、この下腿の創傷は壊死となってしまい、7週後が最初の写真のような状態となったのです。
この創傷がどうにか上皮化され、入浴も問題ないとなるのに3か月(上左図)、治癒状態(上右図)となるのには5か月かかりました。
この患者さんの経験から、私は下腿の創では他の医師が行った処置を信用することなく、創の状態が良好でない創傷の状態の場合には、ちゅうちょすることなく創傷の処置のやり直しをするようにしています。
下の写真は、81才の男性で、畑の鉄筋に右下腿を引っかけたための創傷で、当院を受診された方す。
創傷の皮膚に緊張が生じないようにデリケートに私が創処置を行っています。
創の状態としては、前記の直線的な創より治りにくいタイプの創傷です。
しかし、当院の処置で17日後にはほぼ治癒の状態となりました。
最期は67才の男性で、創は筋層まで達する小さな皮膚欠損の創傷の患者さんです。
トラックと荷物を積み込むコンクリートの台の間に足を落として受傷されました。
皮膚が欠損している部分は全長で5㎝ほどでしたが、創に緊張をかけずに一回の処置で創を縫合するには、私の経験では図の白線ぐらいに皮膚を切除し、皮下を剥離して(筋層からはがして)ゆったりと皮膚を寄せないと壊死のリスクとなります。
患者さんはそのような処置を希望しなかったため、創傷を消毒しながら自然治癒を待つ方針としました。
左は受傷後18日の状態、右は治癒とした46日の創の状態です。
6週間以上かかっていますが、私としては極めて順調に治癒したと評価しています。
最初の症例は15年以上前のものですが、壊死となった後の経過でも、現在であれば被覆材料の進歩により、より早く治癒にもっていくことが可能ではないかと考えています。
このように下腿の皮膚の創傷は一般的に治りにくい傾向があります。