ながさわ整形外科 医療法人ピーチパイ

重度の腰痛が1か月で慢性痛化してしまった77才の女性例

77才独居の女性です。

7年5月初め3日間低いイスに座って、草取りをして左腰痛と左大腿部痛が発症。赤丸の領域です。2週で1度軽減しましたが、再発したため、

6月23日他整形外科を受診し、3時間の待ち時間でさらに悪化したそうです。

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6月28日当院を受診。左脚に体重をかけると症状が増悪するため、右脚に体重をかけて歩いていました。レントゲンでは第4腰椎と第5腰椎の間でずれ(黄色矢印)が確認でき、これが腰痛の原因の可能性かもしれません。

大腿部痛は股関節に起因する場合がありますから、股関節のレントゲンも撮影しましたが、異常はありませんでした。

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診療の指針2でも提示していることですが、私は股関節痛や大腿部痛は腰または股関節に起因している可能性があり、その正確な鑑別はMRI検査でないと分からないと思っています。

まず、股関節のMRI検査を行ってみました。

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股関節には病因となるような所見は確認されませんでした。

次に、腰椎(腰)のMRI検査を実施しています。

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L23、L34、L45の3か所(黄色矢印)で椎間板が脊髄を圧迫して、腰痛・大腿部痛の原因となる可能性が確認されました。右側上段のT1の画像では赤矢印だけが3か所のうちで椎間板がより白い状態です。これはL34の椎間板の(老化による)損傷が最近発症した可能性を示しています。

そこでまず、初診日の6月28日にはL34で神経根ブロックという注射の治療を実施しました。下図の右側です。

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しかし、効果はありませんでした。そのため、2週間後の7月7日にはL23で神経根ブロックを施行しました。しかし、これも効果をもたらしませんでした。

腰椎MRI所見からはL34が病因であることが有力であるため、7月23日にはL34とL45の2つの高位で神経根ブロックを実施しました。

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しかし、これでも効果がえられず、

8月1日には痛くて買い物に出られず、もう食べ物がなくなってしまったという訴えを聞くことになりました。この段階でこの患者さんの左腰痛と左大腿部痛は通常の痛みではなく、1カ月程度の経過ですが、慢性痛化しているということが推察されました。

そこで慢性痛に効果の期待できるノイロトロピンとアナフラニールを処方しています。

すると、8月8日にはとても痛いが、わずかに痛いに軽減し(VAS評価では8→2となります)、買い物にも出かけられるようになったと教えてくれました。そこで、同処方をしばらくは継続しましょうと、4週間分処方したのですが、

9月4日の再診時にはアナフラニールの服用で、頭がぼぉーっとする、排尿障害を感じたということで、8月11日からは服用していないけれど、生活には問題がないということでした。

通常の腰痛治療では軽減しなかった腰痛・大腿部痛ですが、わずか10日間慢性痛に対する治療でほとんど自宅内歩行も困難であった症状が問題なく軽減したことになります。

このように適切な診断のもとステップを踏んで治療していくことで、症状の解決に至ることが可能となります。